金. 10月 31st, 2025

軽い気持ちだった。

深夜の静まり返った部屋で、ふとした好奇心から開いた掲示板。

そこに並ぶM男募集のスレッドは、どれも半信半疑だったし、

正直「どうせ冷やかしだろう」と思っていた。

なのに――

送信ボタンを押して数分後、返事が届いた。

「…え、もう?」

戸惑いと期待がないまぜになった気持ちのまま、やりとりは進んでいく。

LINE IDを交換し、NG事項や希望、条件をやりとりした。

向こうの希望は「遠隔調教」が基本で、

「信頼関係ができたらリアルもあり」という、現実味を帯びた一言が返ってきた。

緊張が走る。

けれど、どこかで「ここまできたら…」という気持ちが背中を押した。

その数分後、LINE通話の着信音が鳴った。

震える指で応答すると、女性の声が響いた。

「じゃあ、いまからオナニーしてみてくれる?」

あまりにあっさりした命令に、心臓が跳ねた。

声は明らかに女性で、作り物ではなさそうだった。

今まで「こういうのは、裏で男がやってる」と思っていた自分の警戒心が、少しずつ緩んでいく。

やがて通話はビデオに切り替わり、

僕は下半身をさらし、指を動かし始めた。

…けれど、なぜかイケなかった。

画面越しの視線、初めての羞恥、どこか現実味のなさ。

興奮と緊張が入り混じったまま、通話は終了した。

「明日、もう一度しようか」

彼女はそう言って、次回の約束をしてきた。

通話が切れたあと、

部屋にはいつもの静けさだけが戻ってきた。

ひとりになって、自分の中に残った興奮を処理しようかとも思った。

でも――もし、明日もまたイケなかったら…。

その不安が、手を止めさせた。

もやもやを抱えたまま、僕は布団に潜り込んだ。

そして考える。

この体験は「遊び」だったのか、「何か」の始まりなのか。

掲示板の向こうにいたその声は、僕の中で、まだ消えずに残っている。

By ichio

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